(和書) 2002年 早川書房、アミール・D. アクゼル, Amir D. Aczel, 青木 薫 訳
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私が高校で習った無限は、『限りなく小さくなる』 とか 『どんどん大きくなる』 とかいった、いわば極限としての無限だった。
( このテの無限は大学入るとε-δ論法で、『どんどん』 とか 『限りなく』 といった曖昧な言葉は一掃されてしまうのはご承知のとおり。 )
こういう無限は我々の実生活的感覚では馴染みやすい。
ところが 『無限そのもの』 (実無限と称する) をキチンと数学として厳密に取り上げた一人がゲオルク・カントールだった。
数学者という人種は、やはり凄いと言わざるを得ない。
無限を 『数えた』 のだから!!
諸氏は、この意味分かる ?
分からんだろうね。
私だって分かったとは、とても言えない。
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1,2,3,・・・・・と数えていって最後はどうなるの ?
ωになるんだってさ。
と書いても、このテの勉強したことない人には、なんのことやら分からんだろう。
無理もない。凡才と天才の差さだね。
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掲題の本は、そこらの話が我々凡人でもナントナク分かるように書かれている。
この本の特徴はカントールの無限論 (超限集合論) をユダヤ神秘主義と対比させていて、その点に多くの頁を割いている。
興味ある人は立ち読みでもしたらよい。
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また、かの有名な、と言っても知らない人には興味もないだろうが、
カントールの連続体仮説 ( ちなみに、この超難問は現在の数学では肯定も否定もできない )や、
かの有名な、と言っても、此れもまた、知らない人には興味もないだろうが、ゲーデルの不完全性定理などが素人向けに説明されている。
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カントールは精神病院で死亡。 ゲーデルも精神を病み餓死。
まさに 『 (実) 無限』 という魔物に魅入られたといっても過言ではないだろう。
どうも、数学、ないし実無限なるモノは魔性をもっているらしい。
事実、かの超難問 『ポアンカレ予想』 を解いたロシアの数学者・ペレルマンは数学のノーベル賞と言われるフィールズ賞受賞を拒否し現在行方不明らしい。キノコ取りをしているという噂(うわさ)もあるらしい。
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この本の最後に、この本が書かれた当時 (和訳版は2002年) に発見された、集合論の一つ成果としての定理が解説ぬきに紹介されている。いわくシェーラーの定理。
書いてみよう。
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『いかなるnに対しても、2^アレフn<アレフωならば、2^アレフω<アレフω4である。』
(そもそも、ここではフレフの記号も書けないし、正確な記述も出来ない!!)
専門家を除いて、上の『・・・』の意味が直ちに理解できる人がいたら・・・もし貴方が数学者でなかったら貴方は生き方を間違えている!!! 直ちに数学基礎論者になるべきだ。大げさでなく、それが人類の為にもなる。
この本の著者自身がビックリ・ギョウテンしている。
『どうして、こんなところに4というサプクスリスト(添え字)が出てくるのだ!!!』と。
人類の中にはインド人・ラマヌジャンのように神がかった数学者が確かに存在した。
だからシェーラー定理をたちどころに理解してしまう人が今後出ないとは限らない。
ただ、そういう場合、頭脳の或る異常さという意味で、『天才と狂人の違い』という興味深い問題を我々に残すだろう。