2016年7月6日水曜日

月刊誌『トランジスタ技術』

現在も此の雑誌は健在のようだ。私には懐かしい雑誌の一つである。

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私が大学の理工学部に在籍していた頃、『真空管回路』という講義があった。昭和42年頃である。

トランジタ回路についての講義もあるにはあったが、その内容は主としてトランジスタの原理が主だったと記憶している。トランジスタの応用技術についての講義は少なかったように思う。

私の学部での卒業論文の題名は『トランジスタの応用』だったと記憶している。

当時はトランジスタはゲルマニュウム・トランジスタが市販され始めた頃で、その半導体のh-fe の温度特性は非常に悪く、その特性の悪さを逆利用した卒業論文だった。

私が卒論として其のテーマを選んだ理由は、少しでもトランジスタの応用技術を身につけたかったからだった。

しかし、学校を卒業して或る電気機器製造会社に入社して思い知らされたのは、私の電子回路の応用技術の貧弱さだった。

回路理論は、それなりに自信はあったが、回路応用技術の貧弱さは、実際に或る回路の設計を任された時、無惨にも露呈した。

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その頃の回路設計で使用れる部品は真空管が主体で、未だ半導体は使われていなかった。その会社では退社後に勉強会があって、その内容は「デジタル回路」だった。その内容も、ANDとは? ORとは? とは、という初歩中の初歩だった。

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ともかく、電気機器製造会社の設計部門で必須なのは、当然のことながら、任された機器の回路の実際の設計である。その際、学校での専門の教科書は、私には極めて頼りにならなかった。勿論、原理は書いてある。しかし私には非実用的に過ぎた。

恐らく其の責任は私自身にあることは当時も自覚していたが、機器の回路を実際に設計するとき、自身の応用技術の、どうにもならない貧弱さには閉口したものだ。

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私は其の会社を3年勤めて退社したのだが、その頃、月刊誌『トランジスタ技術』の存在を知った。この雑誌は題名どおり、トランジスタ技術、とりわけ其の応用技術を主として書かれた雑誌であった。まさに私向けの雑誌であった。

その頃、発光ダイオードやオペアンプ等が市販し始めたころで、その部品の応用の方法が解説されていた。私には救いの雑誌だった。

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この頃から電子・電気回路関連の応用に関する本が市販され始めた。例えば、伊藤健一さんの『アース回路』など。私の弱点を補ってくれる本が、次から次へと市販され始めた。

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勿論、電子・電気回路技術の根底には、電磁気学や回路理論等が根底にあり、それはそれでエンジニアたちには重要である。

しかし、エンジニアたちが、電気機器製造会社で求められるのは、先ず実際の応用技術である。理論は知っていても設計等が出来ないのでは話にならない。

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というわけで、私は、月刊誌『トランジスタ技術』は実に重宝な雑誌であり続けた。私が勤めた電気機器製造会社の設計部門の在職中は、この月刊誌は、私にとって重要な「本」の一つだった。

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余談だが、伊藤健一さんは私は実際見たことがある。勿論、伊藤さんは私を知るはずがない。

というのは、私が勤めた会社に伊藤さんが居たからである。伊藤さんは、確か其の会社の「保健室」の上の階の専用部屋に居た記憶がある。