2016年7月26日火曜日

『ポンドの宇宙・脳と心の迷路』 (その2)

胎児も子宮の中でREM (急速眼球運動) つまり夢をみているそうだ。

新生児も1日の約半分は夢をみているそうだ。

犬や猫も夢をみているらしいのは私は経験的にわかる。

連中も寝言云うときがあるから。その寝言もワンとかニャーの変形音を発するのだから笑ってしまう。

ところで何故、哺乳類は夢をみるのだろう? 

この本によれば、その説明にはいくつかの学説があるそうだ。
----------------------
学説その1:
フロイトの考えで、夢とは心の安全弁であり超自我の眼を盗んで、危険でタブーになっている感情のこもった、あるいは矛盾するメッセージをこっそり伝えるものである。

昼間の出来事の記憶痕跡は、頭蓋骨内の太古の森のなかで、我々の深い暗い過去から引き継いだ “退行性素材” と入り混じる。

などなど・・・
---------------------
学説その2:
心理的平衡を保つのに夢が必要である。

例えば、昼間、侮辱を受けて自尊心を傷つけられたときには、夢の中で自我の価値を高めて補償しようとする。
---------------------
学説その3:
夢は記憶の固定化に役立つ。

哺乳類の脳は既成の神経連結を全く持たずに生まれ、経験に頼って意味あるパターンを織り上げる。

夢の仕事は経験を再現し重要なシナプス連結を強化することにある。 

爬虫類や魚が何故夢をみないかは、その理由による。

また試験勉強したあとは寝て夢をみるのが良い!
----------------------
学説その4:
学説その3と全く逆。

いわく、我々は忘れるために夢をみるのだ!

(この学説が私はおもしろい。) 

人間の情報貯蔵には上限があるのではないか。

ときには別の、もっと有用なパタ゜ーンを納める場所を作るために我々は記憶を “消去” したほうが良い場合もあるのでないかというのだ。

ある学者たちが、この学説を確認するためにコンピューター・シュミレーションを行なったそうだ。

そのモデルやアルゴリズムはよく分からないが、そのシミュレーション結果によると、神経網がむりやり多数重なりあったパターンを押し付けられて過負荷になった“脳”はなんと “発狂” したそうだ! 

この本の記述によると、以下のとおり。

『彼らの新皮質網モデルは、気ままな活動様式を呈し奇怪な連想・幻想的なシリコンのたわごとを印刷して吐きだした。

ときには、 “とり憑かれた” ようになり、同じ記憶を幾通りも変えてもち、あるいはどんな刺激に対してもほんのわずかの記憶だけを印刷するという反応を示した。』
-----------------------
***
人間のシナプスの大部分は興奮性で混線した神経回路網は発振しやすいということでもあるらしい。

発振というのは電子回路などに現われる現象だ。

それは、回路網に正のフィードバックが形成されてしまい、入力信号がないのに自身で勝手気ままな出力を出す誤動作状態だ。

増幅器などの電子回路を設計した人なら誰でもこの発振現象に苦しめられているはず。

***
てんかんなども脳の神経回路網の発振現象のようだ。

人間の脳も、電気会社の実験室のなかの電子回路も、同じ自然現象に苦しめられるというのは、あたりまえの自然現象であるのかも知れない。

しかし、ちょっと妙な気分に、私はなる。

***
この学説によれば、夢は心配ごとというもつれたモノを繕っているのではなくて、もつれを “ほぐしている” 神経網の一瞬の影だということだそうだ。

だから夢とは生体が破棄しようとしている記憶パターンだから、夢を更に記憶するのは勧められることではないということにもなるそうだ。

そういえば、あまり夢というのは憶えていないものだ