いままで書いてきたのは、もう半世紀以上も前の、この本の感想文だ。
この本は、著者たちがインタビューした、或る脳神経学者の言葉を紹介して終わっている。著者たちはその神経学者に、こう質問した。
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『アインシュタインその他の物理学者は宇宙の法則について思索しているとき、ほとんど宗教的といえるような畏敬を感じたと述べています。脳についてもそのように感じましたか?』
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この質問についての、その神経学者の言葉も実に印象的なので、それを、ここに付け足しておこう。
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『 脳について畏敬は感じませんが、神には畏敬の念を覚えます。
わたしが脳に認めるのは宇宙の美とその秩序ですーーー神の現存することの揺るがぬ証しです。
私は脳が、宇宙のあらゆる物理法則に従うことをいま学んでいます。
脳は特別なものじゃあありません。それでいて宇宙でもっとも特別なものです。』
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何度も書くが、この本が出版されたのは半世紀以上も前だ。
今や脳科学は、当時よりも格段に進歩しているだろう。
だから、この本に書かれていることには、だいぶ訂正すべきこと、あるいは付け足すことが多いと、私は思う。
しかし、まんざら間違いだけではないだろう。
ともかく圧倒的に面白い本であることは確かである。
著者たちが、もう一度奮起して、この本の改訂版を出版してもらいたい。
特に、この本の最終章の 『カオス、ストレンジ・アトラクタ、そして意識の流れ』 という主題の更なる進展を、私は是非読んでみたい。
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この本の序文 『汝自身を知れ』 でアイザック・アシモフはこう書いている。
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『私たちは脳を用いて脳を理解しようとしている。あるものが、それ自身を理解することは可能か ? 脳の複雑さは脳の複雑さを理解できるのか ? 』
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今や、脳科学の知識は格段に進歩し続けているのだろう。
しかし、もしかしたら更に混迷へと深みに入っているのかも知れない。
私は前記したアシモフの言葉から、なんの脈絡もなく、ゲーデルの不完全性定理を連想する。
人間の脳は自身の脳を完全に理解できるのか ?
例えば、蛇が自身の尾を飲み込んでいったら最後はどうなるのか ?