2014年8月12日火曜日

『第四次元の小説』(三浦朱門訳)

確か私が中学一年生頃(昭和32年頃)、新聞広告欄に掲題の本の宣伝が載っていたと記憶している。その頃は私は江戸川乱歩の少年探偵団の類を、やっと卒業していたのだが( 何というオクテであることか! )、その代わり霊媒だのといった『超心理学のようなモノ』に私は当時興味をもっていた。 

私は数学にも、そのような超現実的な何やら不思議な世界を勝手にイメージしていた。
( こういう資質の人間に限って数学の才能はないものだ!! ) 

そんな折、第四次元という活字が目に飛び込んできたのだからタマラナイ。
最近は流石に我が感性も鈍りに鈍り、幽霊なるものにも興味はほとんど失せたが、アノ頃は私は怪談大好きのオタクであり、怪談の延長腺上に『第四次元』があったのだ。
ナンカ、オモシロソージャン。と思ったものだ。

ということで、生まれて初めて単行本なるモノを買ったのが掲題の本だった。その頃までは月間雑誌『少年』を講読していた。私はおよそ『いわゆる文学』には興味はなかった。この直後買ったのは小泉八雲の『怪談集』だった。

掲題の本は二十年程前にPC-VAVの人に貸したのだが未だに返却されていない。相手の住所も名前も忘れたし、相手もそうだろう。しかし相手のHNは覚えている。万万が一、この日記を見るかも知れないから言っておこう。「おい、ふみちゃんよ、返せよ」

今やSFなど本屋に山済みされているだろうが、当時はSFという言葉自体もなかったように思う。この掲題の副タイトルは「幻想数学短篇集」であり、空想科学の世界なのだ。

掲題の本は数学を題材とした空想短篇のアンソロジーだ。
・第四次元空間に家を建てる話。
・地下鉄が『メビウスの帯』化した線路を走り行方不明になる話。
・悪魔がフェルマーの定理を解こうとする話。 
          などなど

中学で虚数を習って、虚数とはなんぞや?と妄想にふけって試験に落ちた貴方よ。
貴方はきっとコノの幻想数学短篇集の愛好者だったろう。

訳はなんで三浦朱門?って思ったのは後日のことだが、最近、この人が「ラジオ深夜便」に登場し彼の話を聞いて納得した。三浦綾子が彼を気に入ったのも分かる気がする。
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此の「幻想数学短篇集」はネットで調べたら未だ発行されている。陰のベストセラーであろう。ところでフェルマーの定理は数年前だったか証明されてしまった。素人数学ファンの夢の一つは今やはかなく崩れたが、例の悪魔は今どうしているのだろう。ポアンカレ予想も解かれたしまったから、リーマン予想にでも取り組んでいるのかも知れない。

ところで第四次元だが、人間が想念するものは何であれ現実化するという説を読んだことがある。芥川龍之介の『龍』だったかが、そうである。この説が本当なら、四つの空間次元をもつ世界も現実にあることになる。ただ、人間はそれを認知出来るようにはプログラムされていないだけである。

およそ人類の認識領域など、たかが知れている。早い話が光の波長がそうであるのは今や中学の理科の教科書に掲載されているだろう。ならば人間の認識領域をはるかに超えたモノがあるのは当然の話であって、ただ人間が認識できないだけである。

そう思うと、まんざら此の世も捨てたものではない。愉快ではないか。