2015年1月19日月曜日

『初蕾』(山本周五郎)

掲題の短編は一か月程前にも読んだ。前回、読んだのは『山本周五郎中短編秀作集』(小学館)に収められていたものだが、今回、読んだのは『月の松山』(新潮文庫)に収められたものだ。

同じ小説を、一か月足らずの間に二度も読むということは私は初体験だ。
それだけ、私は此の短編が好きになったということだ。

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『幾十万という人間の中から一人の男と一人の女が結びつく、これはそのまま厳粛で神聖なことだ。』

これは掲題の短編に出てくる言葉だ。

この言葉自体は、お説教臭い言葉だ。私みたいなヒネクレタ人間は、こういう言葉を見ただけで子供じみた反感を感じ、その本を放り投げる悪癖がある。

しかし此の小説に登場する『お民』が、そうであるように、私は此の言葉を素直に受け入れることができる。

この言葉の真実さを、『そうだよな』と私も素直に思うのだ。

それこそ山本周五郎という作家の力量であり、他の作家には換え難い魅力と言えるだろう。

余計なモノを排した、墨絵のような簡潔な文章から成る此の短編は、私の最も好きな『山本周五郎の世界』の一つとなった。