2015年1月1日木曜日

『おさん』 (山本周五郎)

山本周五郎の作品は今迄数多くの全集が出版されてきたのだろうが、2005年に『山本周五郎中短編秀作選集・全5巻』(小学館)が出版された。

この選集の特徴は山本周五郎の中短編の作品を以下の五つのキーワードで編集されていることだ。

そのキーワードは『待つ』『惑う』『想う』『結ぶ』『発つ』であり、それらの各々のキーワードで各巻が編纂されている。

従って、この選集5巻を読めば、山本周五郎の中短編の代表作を一通り読めることになる。

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私は此の数か月の間、此の選集を少しずつではあるが読み通した。各巻には約15,6の中短編が掲載されていて、いずれの作品も、まさに山本周五郎ワールドであり、しみじみと味わい深く読んだ。

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なかでも印象に残ったのは、第4巻『惑う』に収められた『おさん』であった。

内容は省略するが、フラッシュバックの技法が駆使されていて、短編であるにも関わらず話の内容の陰翳が鮮やかであって、読後、暫く私は茫然としていた。

丁度、良き映画の長いエンドロールを、いつまでも見続けているときのように、しみじみとした余韻を私は密かに味わったのだった。

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山本周五郎・・・というより小説一般を読むのは私は実に半世紀ぶりなのだが読書というものの奥行きの深さを再認識し始めたのは、ここ数年と言ってよい。

それまでの私の「読書」は仕事の専門書を読むことであって、それは義務以外のなにものでもなく、およそ楽しいものではなかった。

私は今更ながら読書の楽しみを再発見しつつある