だいぶ前の話だが。或る人が紹介してくれた長編海外小説を読んでみた。しかし内容云々以前に、登場人物のカタカナ名が私は覚えられず十頁足らずで挫折した。
我が青春時、『罪と罰』だったか其の和訳・・・当然だが・・・もカタカナが多すぎて嫌気がさし、これも始めの五頁で放り投げたものだった。
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そこで、というわけでもないが、我が図書館の在庫本をPCで検索していたら、『里見八犬伝』に目が止まった。
里見八犬伝は、子供の頃、東映のチャンバラ映画で私はお馴染みであり、このテの映画は、私は、ほとんど全てみていた。
出演者はほぼ決まっていた。
東千代之介、中村錦之助、大友柳太郎、千原しのぶ、田代百合子、高千穂ひずる・・・。
今や懐かしき面々である。私の鼻たれ小僧時代の憧れの人々でもあった。
同じ東映映画の『新諸国物語』同様に『里見八犬伝』シリーズは、古稀を過ぎた今でも私の心底には郷愁が甘く残っている。
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というわけで、当該の本『里見八犬伝』を図書館にリクエストしたものだった。
さて、届いた本を見ると・・・
現代語訳で漢字は総ルビ付き。挿絵入り。『小学生上級~中学生向き』と書いてあった。(古典文学全集23、ホプラ社)。
なるほど、これなら読み易い。
私は小学生上級の頃は光文社の『少年』の熱読者だった。 私は此の『里見八犬伝』を流し見つつ、『少年』を想い出していた。 私の郷愁は大いに満足させられた。
『里見八犬伝』の懐かしき人達にも再会した。
書いてみようか。
犬塚信乃、犬飼現八、犬田小文吾、犬山道節、犬阪毛野、犬村大角、犬川宗助、犬江新兵衛
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芥川龍之介に『戯作三昧』という短篇がある。
或る日の馬琴滝沢佐吉の日常を描いた佳品であり、私の好きな小説の一つである。